脳神経外科
 
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| クモ膜下出血U | 脳梗塞 | 脳内出血 | 脳卒中はこうして予防する |
脳の病気について
頭痛と脳の病気
   日常,悩みがある時に「頭が痛い」とか,腹が立つことがあれば「頭にきた」などと表現されますが,頭痛は私たちにとって身近で誰しもが一度は経験された事があると思います。
 風邪や二日酔いなどでも頭痛を起こしますが,何気ない頭痛の中にも時として脳の重大な病気が影に潜んでいる事があります。
 例えば,脳腫瘍,脳内出血,クモ膜下出血,髄膜炎などがあげられますが,そのどれもが決して珍しい病気ではなく,いつ私達の身に降り掛かってくるか分からないものばかりです。では頭痛は一体どこからくるのでしょうか。
 脳の外側には,痛みに敏感な部分があり,そこから受けた痛み刺激が大脳皮質に伝えられて初めて私達は頭痛を感じるのです。ここで覚えておいていただきたいのは,脳自体には,痛みを感じる感覚は全くないということです。でも脳腫瘍や脳内出血には脳内部の病気なのに痛みを感じます。それは,腫瘍や出血によって脳の外側に痛みを感じる組織が加圧されるからなのです。
身近な頭痛
   私たち人類にとって頭痛ほど身近な症状はないのではないでしょうか。今時期風邪を引いておられる方も多いと思いますが,風邪を引いて熱が出ると頭が痛くなるのを経験された事のある方は多いと思います。これは風邪による炎症部位から発熱物質が放出され,そのために頭蓋内血管が拡張し,頭がズキンズキンと痛むのです。
 また,休日に寝すぎて目が覚めると頭が重かったりした事を経験された方も多いと思います。ここで覚えておいていただきたい事は私たちは何気なく呼吸をして酸素を吸い,二酸化炭素として吐き出していますが,その二酸化炭素が血液中に蓄積すると頭蓋内血管が拡張し,そのために脳がむくんでくるという事です。私たちは,睡眠時に誰しもが二酸化炭素が蓄積し易い状態になり低酸素及び高炭酸由来の「早朝頭痛」を起こしやすくなるのです。
 次に,夏の暑い時期にアイスクリームや氷菓子を急いで食べたときに,頭がキーンと痛くなることがありますが,これは三叉神経及び舌因神経という脳神経(脳神経は全部で12対あります。)が刺激されるために起こる頭痛で「アイスクリーム頭痛」とも呼ばれます。
 これから春にかけて忘年会,新人歓迎会などで飲んだ後に二日酔いでひどい頭痛を経験された方も多いと思います。これはエチルアルコールが体内で分解される過程でで生ずる「アセトアルデヒド」が大量にできるために生じると言われています。
 性行為に関連した頭痛では,興奮が進行するにつれ徐々に鈍い頭痛が,出現することがあり,これは頭,頸部諸筋肉の角の収縮によるもので,またorgasm直前またその瞬間に起こってくる突発性頭痛は血圧上昇によるものと言われています。
 変わったものでは,中華料理を食べた後に顔面から肩にかけて燃えるような感じがして,さらに頭が痛くなる場合があり,これは中華料理に大量に使われる「グルタミン酸ナトリウム」によるもので,ワンタンスープ200ml中に約3g入っていると言われます。
 最後に,血液透析を受けておられる方の約70%が頭痛を訴えられます。これは血管性頭痛の一種で薬剤投与で軽快します。
片頭痛身
   一口に頭痛といっても,痛む場所も痛みの程度様々です。こめかみのあたりがズキンズキンと痛い,額のあたりが痛い,後頭部が重苦しい,頭全体が痛い,締めつけられるような感じがするなどと人によって,またその時々によって様々に異なります。
 頭痛は実に様々な原因で起こりますが,大きく分けて頭蓋内の原因によるものと頭蓋外の原因によるものとに大別されます。日頃,脳神経外科の外来で多く見られる頭蓋外原因による頭痛について触れます。
 頭蓋外原因の頭痛で特に多いのは,血管や筋肉が原因で起こる頭痛です。血管が原因で起こる頭痛はズキンズキンと痛むことが多く,その代表が片頭痛です。片頭痛は若い女性に多く,母親や祖母に頭病みの人がいることが多いです。頭痛の性質は,ズキンズキンと拍動性で一過性のことが多いです。時には,吐き気を伴ったり目の前がチカチカしたりすることがあります。
 一方,筋肉が原因の頭痛は,頭全体が何となく重かったり,締めつけられるような感じといった症状が出ることが多く,筋収縮性頭痛といいます。疲労やストレスが原因で肩や首の凝りによって頭痛が引き起こされます。
 両者とも,薬による治療が第一ですので,思い当たる方は一度,専門医に相談された方が良いでしょう。
脳卒中
   ある日,突然倒れて救急車で病院に運ばれたが,不帰の人となったり命は幸いにもとり止めたが植物人間になってしまったとか,また手足の麻痺や言語障害が残って社会復帰が難しいなどと「脳卒中」で倒れた後,その後遺症で悩んでいる人が身近にいる方も多いかと思います。また,一家の大黒柱倒れてしまうと経済的にも妻子が夫にかわって家庭を支えなくてはならない状態になったりするように家族の一人が「脳卒中」で倒れると家庭内に大異変が起こり家庭崩壊さえ,起こりかねないこともあります。
 「脳卒中」という言葉はよく耳にしますが,これに相当する英語が「アポプレキシー」といい「打ち倒される」という意味のギリシャ語が語源となっています。「脳卒中」とは正確には「脳血管障害」のことを意味し,それには「脳梗塞」,「脳内出血」,「クモ膜下出血」などが含まれています。脳卒中は,昭和55年までは日本の死亡原因の第1位でしたが,それ以降少しずつ減少し,現在は悪性腫瘍,心臓疾患についで3位になっています。しかし,死亡率は減りましたが,有病率(病気にかかる人)はあまり変わっていないのです。
 医療の進歩で脳卒中によって死亡する人は減ったのですが,高齢者が増えたために脳卒中にかかる人はあまり減らず死亡まではいかないが寝たきりになる高齢者が増える傾向にあります。
 日本では以前は脳内出血が多かったのですが,食生活,生活様式の欧米化および高血圧の治療の進歩により脳内出血は減少傾向にあり,最近は脳の血管が詰まって起こる「脳梗塞」が増加して,毎日のように病院を訪れる患者が増えています。
クモ膜下出血T
   脳は,その外側を軟膜,クモ膜,硬膜といった膜で被われています。「クモ膜下出血」とは字のごとく,クモ膜の下つまりクモ膜と軟膜の間を通っている脳の血管が破れて出血したのが「クモ膜下出血」なのです。
 脳卒中全体の約10%がクモ膜下出血で好発年齢は40〜50歳代に最も多いのですが,20歳代の若い人にも起こります。
 クモ膜下出血の原因としては,脳動静脈奇形,脳腫瘍,血液疾患(白血病)などがありますが,40歳以上の人のクモ膜下出血は,まず,動脈瘤が破裂したと考えてよいでしょう。
 クモ膜下出血の発生頻度は年間人口10万人につき約11人と言われており,決して珍しい病気ではなく,みなさんの方の中にも知人でクモ膜下出血で倒れた人がいるという方もいるかと思います。
 クモ膜下出血の際の主な症状が「突然起こる激しい頭痛」で意識のある患者さんにに聞くとバットか何かで頭を叩かれたような今まで経験したことのない頭痛と表現することが多いです。しかし,重症例ではそのまま意識のなくなることもありますし,軽症例では,風邪などと間違われることもあるので,「何かおかしいな」と思ったら最寄りの脳神経外科を受診された方が良いでしょう。
 頭部CT検査でクモ膜下出血が確認されれば直ちに脳血管撮影という頭蓋内の血管を撮影する検査を行い動脈瘤の存在の有無を確認します。脳動脈瘤の存在が確認できれば,その時の患者さんの状態に応じて緊急手術になることもあれば,数日間待機してから手術を行うこともあります。ここで,みんさんにも知っていただきたいことは,クモ膜下出血の際の手術は,直す手術ではなく,破れた動脈瘤が今後これ以上再破裂するのを防ぐ手術ということです。従ってクモ膜下出血で倒れた時の状態がその後の予後に大変影響します。
クモ膜下出血 U
   クモ膜下出血の原因が動脈瘤破裂の場合,前触れもなく突然起こることが多いのですが,実際に助かった患者さんに発作前のことを良く聞いてみると,かなりの人に軽い頭痛があったとか,物が二重にみえたなどの症状があったといいます。脳神経外科に運ばれクモ膜下出血の診断をされ,手術を行い無事手術が終わったからといって安心できないのがクモ膜下出血の怖いところです。原因はまだ分からない点が多いのですが,クモ膜下出血を起こしてから4〜7日後に脳の正常血管が収縮し,脳梗塞が生じてしまうことがあり,「脳血管れん縮」といい,そのため重大な後遺症を残してしまうことがあります。
 また,私たちの脳の中には脳脊髄液という無色透明な水がたまっており脳内から脊髄そして脳表へと絶えず循環しています。クモ膜下出血の際,その随液の吸収が妨げられ,ゆっくりと脳内に随液が貯留してくる「水頭症」という現代の医学をもってしても未だに完全には防ぎ得ない合併症が待ちかまえているのです。
 「クモ膜下出血」という病気の怖さがお分かりになったかと思いますが物が二重に見えたり,風邪もひいていないのに急に頭痛がするとか,3親等以内の親族の中でクモ膜下出血で亡くなった方がいるような場合は,脳神経外科によくみてもらうと良いでしょう。
脳梗塞
   脳卒中といえば,以前は脳内出血が代表的なものでした。しかし,食生活,生活様式の欧米化および高血圧の治療の進歩等によって,現在では脳の血管が詰まったために起こる「脳梗塞」が数の上では脳卒中のトップを占めるようになりました。
 私たちの脳へは4本の太い血管が(内頸動脈と椎骨動脈が2本ずつ)が心臓から血液を送っていて,この4本の血管は頭蓋骨に入ると「ウイリス・リング」という動脈の輪をつくってそのすべてが連絡をしています。これは生まれ持ったバイパス(連絡路)で,1箇所が詰まっても脳が血液不足にならないようになっているのです。この動脈輪から先の血管が脳のすみずみに血液を送っていますが,脳の血管が動脈硬化などで極端に細くなったり,あるいは詰まってしまって,その上バイパス形成がうまくできないとその先の脳には血液が行かなくなります。そうすると血液が運搬している酸素やブドウ糖が不足し脳に障害が起こります。これが脳梗塞と呼ばれるものです。
 昔の人がよくいう脳軟化とは脳梗塞のことで,実際に脳梗塞を起こした患者さんの脳をさわってみると脳梗塞を起こした部位の脳が柔らかくなっています。
 脳梗塞には「脳血栓症」と「脳塞栓症」の2つがあり,脳血栓症は,脳の血管の動脈硬化が進み血管内腔が段々細くなり血管が詰まってしまう状態で、脳塞栓症は心臓に弁膜症や不整脈があり,それが原因で心臓の中に血のかたまりができて,それが血流によって脳に運ばれ脳の細かい血管に詰まった状態のことをいいます。
 時々,外来に急に一次的に一方の手足に力が入らなくなったり,半身がしびれたり,ろれつが回らなくなったなどという症状が現れても,別に治療しなくても24時間以内にすっかり症状が消えてしまったという患者さんが来ます。このような発作を「一過性脳虚血発作」といい,それを表す英語の頭文字をとって「TIA」とも呼ばれます。
 一度、TIAを起こしたことのある患者さんは、TIAを経験したことのない健常人(同年齢)と比べると脳梗塞を起こす危険度が約10倍も高いといわれます。実際に脳梗塞になった患者さんに聞いてみると,その3分の1以上の人が以前にTIAと思われる発作を経験したといいます。
 従ってTIA(一過性脳虚血発作)は,将来的に脳梗塞の起こる可能性があるという脳の警告と思って、十分に注意しその予防に留意することが必要です。そのためには,TIAの症状があったら必ず早めに専門医にみてもらうことが大切です。症状がすぐに消えてしまったからといってそのまま放置しないことです。
脳内出血
   「脳内出血」とは字のごとく脳組織の中に出血が起こったものです。現在はCTスキャンなどの出現で,脳内出血は迅速かつ簡単に診断されるようになりました。昔,脳卒中といえば,その代表は脳内出血でしたが最近は脳梗塞が増加したのと反対に減少傾向にあります。脳内出血の主な原因は高血圧ですが,高血圧以外にも脳動脈硬化症,小さな血管奇形,血液の病気,肝臓の病気,外傷などによっても脳出血は起こります。脳内出血によって現れる症状は,出血を起こした場所によって様々です。大脳の中で特に脳出血が起きやすいのは「内包」と呼ばれる、反対側の手足を動かす運動神経や反対側の手足からの感覚を伝える神経など重要な神経繊維の集まりのある部分の近くです。
 最も多いのは,内包の外側の「被殻」からの出血で被殻出血または外側型出血ともいいます。ついで多いのは,内包の内側の「視床」というところから出血で視床出血または内側型出血といいます。このような内包付近に起こる脳出血は脳内出血全体の70〜80近くを占めます。また脳出血で最も症状が重いのは、脳幹部と呼ばれる脳神経や呼吸の中枢がある場所の出血です。全脳出血の約5%を占めますが,この部分の出血は両手両足が動かなくなったり,場合によっては発症後まもなく死亡してしまうこともあります。
 脳内出血の治療は,その出血の場所、大きさ、患者さんの意識状態などによって外科的治療を行うこともあれば,内科的に治療することもあります。
 大切なことは,その後のリハビリテーションと再発の予防です。再発の予防は一にも二にも血圧のコントロールです。日常生活に注意し,特に塩分控えめの食生活をして,月に一度は血圧のチェックを受けに病院を受診しましょう。
脳卒中はこうして予防する
   脳卒中の一番の原因は高血圧と動脈硬化です。更に脳卒中の危険因子としては,恒例,男性,高血圧,心電図異常,糖代謝異常,高尿酸血症,高フィブリノーゲン血症,多血症,喫煙,飲酒などが挙げられます。しかしなんといっても脳卒中の予防は,まず高血圧対策からといってもよいでしょう。高血圧は適切な食事療法(特に塩分制限)と薬物療法でコントロールできるところまで現代の医学は進んでいます。
 脳卒中を予防するために打つべき具体策の第一といえば,血圧をできるだけ定期的に年に数回チェックして高血圧が見つかればすぐに血圧を徹底的にコントロールすることから始めるべきでしょう。比較的若くて脳卒中で入院してきた患者さんの中に「高血圧を指摘されたことはあるけど,治療は全然していなかった」という人がかなり多いのは事実です。30〜50歳代の人で高血圧,特に最低血圧の高い人はすぐに医師の指導のもとに食事療法,薬物療法を始めて下さい。
 ちなみに正常血圧は最高血圧が139ミリ以下で,かつ最低血圧が89ミリ以下の場合をいいます。また高血圧とは,WHOの血圧分類によれば最高血圧が160 ミリ以上,最低血圧が95ミリ以上ということになっており正常血圧と高血圧との間に人を境界域高血圧といい,高血圧予備軍ともいえます。高血圧予備軍の方は,将来本当の高血圧に移行する可能性が高いので,この時期から食事の注意を始めると良いでしょう。また日本人は欧米人と比較すると塩分を不必要に多く摂取しているといわれます。日本人一人当たりの平均塩分摂取量は,10〜15グラムと多めで,これは10グラム以下に抑えたいものです。仮にインスタントラーメンを汁まで全部飲んでしまうと,それだけで一日の必要塩分摂取量をとってしまうことになりますので注意が必要です。またもちろん適度な運動と休養も必要です。
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