血管外科
 
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| 動脈閉塞症 | 動脈血栓症 | 閉塞性血栓血管炎 | 糖尿病壊疽 |
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| 血栓性静脈炎 |  
血管疾患について
 近年、本邦においては生活様式の変化や人口の高齢化に伴い、血管疾患の増加が著しく日常診療において念頭におかれるべき疾患の一つとなっています。私ども血管外科医が扱う血管疾患を動脈系、静脈系およびリンパ系に大別しその病態や治療の要点を解説します。
動脈閉塞性疾患
   動脈にみられる閉塞性疾患は、慢性閉塞と急性閉塞に大別されている。慢性動脈閉塞には動脈硬化に起因した閉塞性動脈硬化症(ASO;arteriosclerosis obliterans)といまだに原因が明らかとなっていない血管壁の炎症性変化を伴う閉塞性血栓血管炎(TAO;thromboangiitisobliterans,バージャー病)がある。一方、急性動脈閉塞の原因として塞栓症および血栓症がある。塞栓症は心臓内や大動脈内に形成された塞栓子が遊離して末梢動脈を閉塞するものであり、血栓症は炎症や動脈硬化により障害を受けた血管壁において急速に血栓形成が促進され閉塞に至る。
レイノー症候群
   レイノー現象とは、寒冷刺激やストレスなどの要因によって指趾の血管の発作性攣縮を起こし色調変化が生ずることを称する。色調変化は可逆性であり、蒼白、チアノーゼ、紅潮の三相に変化する。本現象を来す症候群をレイノー症候群と称し、原因不明の一次性と基礎疾患の明らかな二次性とに分類されている。
動脈拡張性疾患
   動脈の拡張性疾患は動脈瘤といわれ、主として動脈硬化あるいは先天性結合織異常による脆弱血管の破綻が原因となっている。また、動脈径の拡大は比較的軽度であるが動脈内膜に亀裂が生じ、血流が中膜および内外二層性となるものを動脈解離という。静脈疾患 静脈疾患としては、発生頻度の高い下肢静脈瘤や血栓静脈炎がある。 リンパ系疾患  四肢リンパ浮腫は原因の不明な原発性リンパ浮腫と子宮癌や乳癌術後に生じる続発性リンパ浮腫がある。
ブラッドアクセス
   腎不全患者におこなわれる血液透析の際に、血液を対外へ環流し再度対内へ戻す血液通路である。
慢性動脈閉塞症
   慢性動脈閉塞症の主なものは、動脈硬化を原因とした閉塞性動脈硬化症と、血管炎を原因とした閉塞性血栓血管炎いわゆるバージャー病があります。バージャー病は本邦をはじめとしたアジア人種に特有な疾患とされていたが、その発生頻度は激減し、現在では慢性動脈閉塞症のおよそ90%は閉塞性動脈硬化症です。
閉塞性動脈硬化症
   動脈硬化とは 動脈の管を形成する壁には、外膜、中膜、内膜の3層があります。内膜あるいは中膜にコレステロールやカルシウムがたまって厚くなり、血管内腔がせまくなる状態を粥状硬化あるいはアテローム硬化という。粥状硬化があると、その表面が荒れて、そこに血液がたまり内腔をせばめたり、つまったりして(血栓)、血流をさまたげます。動脈の狭窄閉塞によりおこる症状は 動脈の狭窄閉塞の程度により血流障害の重症度をあらわす分類(フォンテーン分類)があります。血流障害が、ごくかるく無症状あるいは冷感、しびれ感がある(フォンテーン1度)。歩行開始時には異常はないが、一定の距離を歩くと下腿やあしの筋肉の痛み、ひきつりを感じて歩行ができなくなり、休息により症状が消失しふたたび歩行可能になるいわゆる間欠性跛行である(フォンテーン2度)。動脈閉塞の拡大によってさらに強い虚血状態になると、安静時においても下肢の疼痛がある(フォンテーン3度)。潰瘍形成や壊疽はフォンテーン4度でわずかな外傷、やけど、凍傷などを誘因としておこる終末状態です。
治療法について
   閉塞性動脈硬化症の治療法は、いろいろあります。運動療法や薬物療法、レイザーやアテレクトミーの補助手段を含め、カテーテルを用いた血管形成術、代用血管によるバイパスを中心とした血行再建術などが、血行障害の程度や閉塞部位の範囲により行われています。薬物療法は閉塞性動脈硬化症の治療の基礎となるものであり、血管拡張作用や血小板凝集抑制作用、血液凝固阻害作用などのある薬剤がつかわれます。薬物療法は主としてフォンテーン1度、2度の軽度の虚血症状のときに行われています。カテーテルを用いた血管形成術や血行再建術の外科治療はフォンテーン3度、4度の重症虚血肢と跛行距離が100m以下に行われています。外科治療の前後にも薬物療法は併用されています。動脈硬化症は70歳、80歳以上の高齢者に多くみられ、脳血管障害や虚血性心疾患など全身の動脈の硬化症を合併することも多く、治療法の選択が難しいところであります。
急性動脈閉塞症
   四肢の動脈に急性閉塞が生じると、その動脈が環流する組織は急激な虚血にさらされます。この挙血状態が数時間以上続くと、神経、筋肉、皮膚の順に障害が起こり、すみやかに血流が再開されなければ、四肢の壊死に至るので迅速な診断や治療が必要になります。
動脈閉塞症
   塞栓とは、血管内を移動し閉塞させるものをいいます。動脈閉塞症は心臓の壁に付着する血栓によることが多く、不整脈、心臓弁膜症に続発します。このほかに大動脈粥状硬化や動脈瘤などに生じた血栓やアテロームが塞栓源となることもあります。塞栓の閉塞する動脈は、上肢より下肢に多くみられ、動脈分岐部に発生することが多い。症状は突発的に起こり、疼痛、蒼白、動脈拍動消失、知覚鈍麻および運動麻痺がみられます。治療はできるだけ早期に、手術による塞栓摘除術や薬物による血栓溶解療法などの適切な治療を開始することが重要であり、時期を失すると救肢できないばかりか生命予後が不良になります。
動脈血栓症
   血栓は血管内で血液が、固まった状態を称し、血管の内腔の内皮の損傷、炎症、血流の変化、血液凝固性の亢進により生じます。血栓症では、病因があらかじめ存在することが多く、一般には下肢の大腿動脈や膝窩動脈にみられます。症状は血栓の部位、広がりにより異なりますが、閉塞症と同じ症状であります。疼痛、蒼白、動脈拍動消失、知覚鈍麻および運動麻痺がみられます。血栓の広がりとともに虚血症状は重篤となります。治療は閉塞症と同様にできるかぎり早期に、手術による血栓摘除術や薬物による血栓溶解療法などの適切な治療を開始することが重要でありますが多くの場合、病因に応じた血管修復や血行再建術が必要であります。
閉塞性血栓血管炎(バージャー病、特発性脱疽)
   通常四肢の動脈をおこし、青壮年男子に多く動脈全層の炎症であります。病因には、細菌感染説、アレルギー説などがいわれていますが、喫煙と深い関係がある以外明らかではありません。これによる動脈閉塞は、四肢のとくに下肢の末梢動脈にみられることが多く再発をくり返します。症状は動脈の閉塞部位、範囲や側幅血行路により虚血症状が異なりますが、冷感、間欠性跛行、安静時疼痛、潰瘍、壊死がみられます。治療は、まず禁煙を徹底することが大切であります。内科療法では血管拡張剤、抗血小板剤などの薬物療法が主体であります。交感神経節切除術による血管収縮の解除が行われています。動脈硬化症とことなり、臓器血管に閉塞を合併することはまれで、閉塞性変化は直接死亡の原因になることはまれであります。
糖尿病壊疽
   糖尿病の3大合併症は、持続する高血糖による網膜症、腎症および神経障害です。糖尿病壊疽は、末梢性の神経障害を基盤として、足の潰瘍、壊死が生じることをいいます。糖尿病壊疽の特徴は、動脈硬化に基づく血行障害と異なり、疼痛がなく、あしの皮膚温は高く、あしの動脈拍動も増えます。治療は、血糖の内科的コントロールを徹底しインスリン軟膏を主体の保存療法をおこないます。動脈硬化症を合併する糖尿病壊疽もみられ治療が難しく下肢の切断に至る場合もあります。糖尿病壊疽の予防には、日頃からのあしの衛生(フットケア)がある。毎日あしを洗いよく乾燥させる、深爪をしない、あしに合った靴をはくなどを心がけることが大切です。
下肢静脈瘤
   下肢静脈瘤とはあし(下肢)の静脈が太く、浮き出ているものを下肢動脈瘤といいます。静脈瘤の多くは太くなっているばかりではなく、まがりくねっています。どうして下肢動脈瘤ができるのでしょうか。 血管には「動脈」と「静脈」があります。心臓からでた血液は、動脈を通り身体の隅々にいきわたり、その後は静脈を経由して心臓に戻ります。下肢では、深いところを通る「深部静脈」と皮膚表面近くを通る「表在静脈」を経由して血液が流れます。表在静脈には「大伏在静脈」と「小伏在静脈」があり、深部静脈と表在静脈は「交通枝(穿通枝)」という短い血管でつながれています。 血液が心臓へ戻ることを「静脈環流」といいますが、この静脈環流には静脈の内側にある「弁」が大きな役割を果たしています。血液を流す力はなく、血液を上方に押し出すのは、主に下腿の筋肉の働きです。下腿の筋肉は第二の心臓とも呼ばれ、筋肉が収縮する時に、あしの静脈を圧迫して血液を押し上げるのです。(筋肉ポンプ作用)このように静脈弁と筋肉ポンプ作用が協調して働いてはじめてあしの血液は心臓まで戻るのです。 多くの静脈瘤は、表在静脈(とくに大伏在静脈や小伏在静脈)の弁が壊れるために発生します。弁が正常に働かないと、血液は逆流することになり、あしのしたの方に血液が溜まります。その結果、静脈は拡張し静脈瘤ができてくるのです。
静脈瘤の症状
   静脈瘤ができると、あしがむくむ、だるい、重い、ほてるなどの症状がでてきます。夜間に足の筋肉がつる、いわゆる「こむら返り」もおきやすくなります。症状が重くなると「湿疹」ができたり、「色素沈着」「潰瘍」ができます。また、静脈瘤は美容的な悩みの原因にもなりますが、長年にわたり徐々に静脈瘤ができ、全く症状のない人もいます。
静脈瘤の治療
   静脈瘤の治療には、弾性ストッキング、硬化療法およびストリピング(抜去術)があります。弾性ストッキングは血液があしに貯留しないように、静脈瘤を強く圧迫するもので軽症例に弱圧(20mmHg)あるいは中圧(30mmHg)の弾性ストッキングを使用します。また、弾性ストッキングは硬化療法やストリッピング手術のときにも使用されます。硬化療法は静脈瘤の薬(硬化剤)を注射するものです。硬化剤により静脈の内側をくっつける簡単で効果的な方法です。硬化療法だけでによる治療では、血液の逆流が続き再発する危険性があり、逆流の強い場合には、伏在静脈をしばる(結紮術)小手術を併用します。ストリッピング手術は、大伏在静脈あるいは小伏在静脈を引き抜き、さらに小さい皮膚切開により静脈瘤を切除するものです。多くは全身麻酔で行われ1〜2週間の入院を必要としますが、どんな重症な静脈瘤でも確実に治療できます。治療法の選択は静脈瘤のタイプや重症度により異なりますが、主治医と相談して決めるのがよいでしょう。
日常生活で守ってほしいこと
   下肢動脈瘤のある患者さんでは、症状を軽くさせ、悪化させないために日常生活で守ってほしいことがあります。できるだけあしに血液が溜まらないように、長時間の連続した立ち仕事はさけましょう。立ち仕事のひとは、1時間の仕事に5〜10分間は、あしを心臓より高くして、休息すると良いでしょう。休息の取りにくい人は、足踏みをしたり、歩き回ったりしてください。あしの筋肉を使うと、静脈環流がよくなるからです。夜寝るときには、クッションなどを使用しあしを高くしてからやすんでください。また、立ち仕事や外出のときには、弾性ストッキングをはいてください。
血栓性静脈炎
   静脈内に血液のかたまり(血栓)が生じるのは、主に血液の停滞、遅滞が原因であり大きい外傷後、手術後、妊娠中、長期の座位や臥床、感染、静脈瘤、肥満などが誘引となることが多く、静脈の部位により、表在静脈血栓症と深部静脈血栓症とがあります。表在静脈血栓症は、通常強い炎症反応を伴い、疼痛、発赤、熱感、腫脹がみられます。深部静脈血栓症は、上肢では腫脹、表在静脈怒張などが出現し、下肢では下腿に起こる歩行時痛、圧痛、腫脹がみられます。
 表在静脈血栓症の治療は、鎮痛剤、圧迫包帯をおこないます。深部静脈血栓症の治療では、外科治療よりは、むしろ血栓を溶解する(血栓溶解療法)や血液を固まり難くする(抗血栓療法)内科療法が最優先されています。ただ、深部静脈血栓症の閉塞血栓が遊離して肺動脈にとび重篤な呼吸不全になり死にいたる場合があり、救急救命手術を要します。このような重篤な合併症を未然に防止するために、腎動脈下の下大動脈にフィルターを挿入することも行われています。
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